フィンランドでは、子どもからお年寄りまで、誰もが進んで歯医者さんを訪れますが、とくに妊婦さんは口腔内の健康に気をつかっていて、多くの妊娠中の女性が歯科医院に足を運びます。

当地では「妊娠したらまず歯科に行こう」という感覚が当たり前になっているのです。妊娠中の母親は女性ホルモンの関係で虫歯や歯周病になりやすく、歯周病菌などが子宮に悪影響を及ぼし、早産のリスクが高まることを知っているからです。

そのため、フィンランドでは妊娠したらすぐに歯科医院に行って、歯科衛生士の下で教育を受ける土壌があります。

そして出産後は、子どもを絶対虫歯にさせない、そのためには0歳から歯医者さんに通う、というのが当たり前の社会になっています。北欧諸国ではマイナス1歳からの虫歯予防」という言い方をしているのですが、つまり生まれる前から、お母さんから口の中の健康を守るという考え方です。当院でも妊婦歯科検診を積極的に行っております。

生まれたときから定期的に歯科医院に来院して「予防」を行えば、一生虫歯や歯周病にならない生活を送ることができます。

日本でもこれまで「予防が大切」と言われてきましたが、日本で言う予防とは単に「早期発見、早期治療」という意味に過ぎません。定期的に歯科医院に行って、小さい虫歯のうちに見つけて、小さいうちに処置しましょうという程度のものですが、北欧諸国の場合は絶対に「疾病を食い止める」、「疾症を起こさせない」ということが念頭に置かれているのです。

「予防とは何なのか」と今一度考えてみました。
考え抜いた末に「健全歯を削らないこと」、「しっかり根拠のある予防をすること」という結論にいたりました。

ただ歯の点検をすればいいというわけではなく、「きちんと検査して、評価して、定期的に患者さんの口腔内の変化をしっかりとデータとして残す」ということです。一般的な歯科医師は、その患者さんが「いつ来たのか」、「どんな治療をしたのか」という情報は、当然カルテを見れば分かりますが、私たちの医院で行っているデータ管理はそれだけではありません。患者さんごとに、細かい変化や次に来院されるまでにどのような課題を患者さんに与えたかなど、より詳細な情報をしっかりと整理・収集しています。そのデータを見ながら「今こういうリスクを生じているから、こういうアプローチをしよう」といった判断をし、今後の予防プランを提案していきたいのです。「検査をしないのは医療ではない」ということです。現在私の医院で行っているスタイルは、そうした考えをベースに「きちんとデータ化する」という考え方で行っています。

それは「きちんと検査をし、きちんと管理をする」ということです。ヨーロッパのなかでもとくに北欧は、福祉国家と言われているとおり、国家がきちんと国民全体のQOL(Quality of life=人生の質)を重要視してコントロールがなされていて、歯科医療だけでなく、医療全般に対しても同じような発想で取り組みが進められてきました。

治療という面を見れば、北欧諸国よりも日本の方が技術的には上かもしれませんが、国民の健康の管理体制、予防に関する国民の意識という点では、北欧諸国の方が進んでいます。
日本の他の歯科医師の方々も、北欧諸国のそうした「予防歯科」というスタイルを取り入れる方々もいらっしゃいますが、数的、比率的にまだまだ少ないのが現状です。

私の目指すところ、それは予防を行うことにより「地域のみなさまの歯の治療を消滅させること」なのです。