北欧諸国では歯医者さんは、“誰もが喜んで行きたいところ”だという話に触れました。一方、日本では、“歯医者さんは最も行きたくないところ”のひとつです。この違いを実際にデータで見てみると、みなさんその差に驚くはずです。

定期的に歯科検診・クリーニングを受けている人の割合が、スウェーデンでは90%であるのに対し、日本ではたったの2%しかいないのです。

ほとんどの人が定期的に歯医者さんに行っているスウェーデン。一方、100人に2人しか歯医者さんに行かない日本。この差はまったく驚くべき数字です。

なぜ日本はこれほど歯医者さんへ足を運ばないのか。答えはこれまで述べてきた通りきわめて明白です。それは、日本人にとって歯科医院は「歯が悪くなったとき治療しに行くところ」であり、「治療は痛くて嫌なもの」だからです。

「日本は保険で虫歯の治療が安くできるのだからよいではないか」、「年に何回も歯医者に通い続けるのはお金のムダだ」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この定期的に歯医者さんに通っていない98%の人は、将来大きな代償を払うことになるのです。なぜなら、この人たちは生涯に渡って治療を繰り返すことになり、やがては自分の歯の多くを失い、その治療に費やす時間と費用、そして苦痛は膨大です。 日本人の場合、60歳から平均年に1本ずつ歯が失われていき、気がついた時はもう手遅れになってしまうのです。

今の日本人が持っている「歯医者は痛くなったら行けば良い」という概念を根底から覆す努力が必要とされています。

予防という概念が定着していない日本の歯科医院は、まるで「応急処置」をする野戦病院のようになってしまっていて、歯科医院側もやって来る患者さんをとりあえず治療する、患者さん側は歯が悪くなったら治療だけをしてもらいに行く、という悪循環が繰り返されてしまっています。

戦後、アメリカから日本へと砂糖を使った食品が大量に入ってきて虫歯の洪水と言われた時代、早く痛みを止めてくれるのが、良い歯医者さんとされていました。どんな治療をしていたかというと、麻酔をかけて神経を取ってしまうやり方です。それが今でも主流になってしまっていて、歯科業界もそうした旧弊なスタイルから抜け出せないままなのです。

患者さんの全身を、より健康に導くための「予防歯科」という処置に対して、「痛くもないのに通院するなんてめんどくさい。痛くなってから歯医者なんか行けばいい」という考えが、日本では根付いてしまっているのです。そのため、どこの病院に行っても同じような処置をされてしまい、いつまでたってもズルズル通院を行い、挙句の果てに転々と歯科医院をまわり、結果としてかかりつけの歯科医院が見つからないという状況に陥ってしまうのです。

現状の“行きたくない”と思われてしまっている歯科医院を“行きたい”と思われるような場所に変えること、自分がこの歯科医院に通ったら生涯安心だな、と思ってもらえるような医療を提供することが、これからの歯科医院にとって最も重要な課題と考えています。