糖尿病といえば、大相撲、照ノ富士が糖尿病で休場入院し、十両に陥落するなど話題になっておりますが、糖尿病を患う方は歯周病になりやすく、さらに血糖コントロールが悪くなる事が分かっており、歯周病は糖尿病と相互に悪い影響を及ぼします。

学術的にどれくらい立証されているのかというと、最初は1993年にアメリカの歯科医師が発表した論文がきっかけです。
糖尿病には、腎症、網膜症、神経障害、脳梗塞、心筋梗塞などの合併症がありますが、その第6が歯周病である、というものです。
アメリカやEUに遅れること18年たってようやく、日本糖尿病学会の治療ガイドラインに歯周病が合併症として登場します。

糖尿病の原因の一つに歯周病が関係していることが分かっていますが、これに対する内科医と歯科医の意識はまだまだ低く、医科歯科の連携はあまりありません。

患者さんにも、歯周病と糖尿病のリスクは、まだまだ情報とご理解が行き渡っていないのが医療の問題点だと池田歯科医院は考え、佐賀の地域の健康に役立つので今回特集してみました。

糖尿病と歯科治療の結びつき

歯科治療というのは、以外と奥が深くて、ただ歯を治すだけでなく、内科系疾患の予防に役立ちます
EUや米国では予防歯科が進んでいて、虫歯や歯周病や噛み合わせだけを治す歯医者さんは「カーペンター・デンティスト(大工みたいな歯医者)」と馬鹿にされ、皮肉を込めて呼ばれます。
まず歯科で体の異変を察知し、医科と歯科の連携で身体全体を治す手助けをしていく。

口というのは、体の内部の粘膜が外部に露出した最も大きな部分ですから、口腔感染制御は極めて大事なんです。

なので、私は歯科は病の進行の最前列に位置すると考えて治療しています。
例をあげると、歯科治療の一環で、唾液腺など口の中をマッサージして唾液を出す処置をしています。
唾液には歯周病菌の力を弱めたり、口の中の傷を治して、菌が血管に入り込むの防ぐ効果があります。
すると長期経過で患者さんから血糖値がよくなった、血圧がよくなったという声が上がってきました。顔のほてりがなくなったとか、更年期障害が軽くなったとかです。

糖尿病患者は、ほぼ歯周病キャリアなので、歯周ポケットに入り込んで繁殖した細菌が出す炎症性物質が、歯肉から血管に入りこみ、血糖値を下げるインスリンの働きを弱めることがわかっています。
体はなんとかして、より多くのインスリンを作ろうとしますが、これが続くとインスリンを作る細胞が疲弊し、糖尿病を発症します。

また、唾液が少なくなることによる口腔乾燥症、味覚障害糖尿病を悪化させます。味覚が変わり、味がわからなくなって濃い味になると血糖値が上がります。
糖尿病の人は糖質を欲しがるので虫歯や歯周病のリスクも高いのです。
このように歯をケアすると血糖値が改善し糖尿病が良くなりやすいというはエビデンス(医学的根拠)が確立しているんですね。

朝になにげなく新聞を読んでると「元気な体は口腔(こうくう)から」という全面広告が載っていました。出稿元は歯科医師会かなと思ったら、内科の糖尿病学会なんです。
入院中の患者に対し、歯科衛生士が歯のケアをした場合と、しなかった場合を比較したのです。その結果、入院日数が平均20%減ったという研究がありました。
そのため、保険制度的にも追い風が吹いています。
内科医が歯科医に対して糖尿病患者の紹介状を書けば、歯科医での高度な歯周治療が開始できるようになりました。
内科医による歯周病(英語名perio)処置」という意味で「P処(糖)」と呼ばれます。糖尿病の患者さんは、内科医に相談してみてください。

うまくいかない医科・歯科連携

内科の糖尿病専門医は国内に5000人前後いますが残念なことに、実際に歯医者さんに患者を紹介するなど、行動している人はごくわずかです。

どうしてでしょうか?

やはり、この問題すべては教育だと思います。

大学の医学部では歯科との連携の大切さなどさほど教えません。
大学の歯学部でも歯科は人の命に関わる問題に取り組む時代なんですよ、という教育を歯学部では軽んじており経営に直結する 、国家試験に何人受からせたかとかそちらに必死です。

ましてや両者が同居する総合病院や大学病院でさえ、派閥や縄張り、縦割り意識が働いて横の連携は乏しいのは残念な事です。

これまでの医科・歯科連携は、癌や高齢者医療などで、なんども医療政策が試みられましたが、ことごとく失敗です。
なぜなら医科と歯科は、診療報酬上でも別枠です。
病院における歯科標榜も2割程度にとどまり、医科からの関心は、比較的低い状況が続いてきました。
しかし、患者の高齢化などに伴い、口腔ケアが重視され、チーム医療の検討も進む中で、歯科医療の重要性がクローズアップされている最中です。

医師と歯科医師での縦割り縄張り意識が、そのまま社会に残っていることは、患者さんにとってデメリットしかないので、他のサービスと同様に、医療サービスも、イノベーションを引き出す努力が必要だと思います。

最後に、歯周病や糖尿病は、慢性疾患で「治す」よりも「コントロールする」病気です。
がんばりすぎず、あきらめず、長くお付き合いしていくことが最も大切です。上手にお付き合いをすれば、重症化や合併症を防ぐことができます。
急激にがんばりすぎると続かないことがありますので、できることから少しずつ継続していきましょう。